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福寿草

 2024年2月17日。福寿草が出ているかもしれない。

 今年の冬はこれまでになく暖かく、雪もほとんど降らなかった。雪が融けて、庭で最初に咲く花が福寿草だ。毎年この花が咲くのを母はとても楽しみにしていた。

 庭の大体この辺だったと思うけど、芽がでている様子はない。ググってみると、「福寿草消えた」と言葉が目に入る。家の福寿草も消えちゃったのかな。

 一分もあれば歩き回れる小さな庭は、父が敷地の中心に小さな松を二本植えて、それを囲むように誰かから貰ったり、買ってきた苗木が植えられている。父が亡くなった後に松の片割れが枯れ、今は一本だけになり、それも少し可哀想な状態になっている。

 雪が少なかったせいか、二月なのに水仙の葉っぱがあちらこちらに出ていて、こんなに水仙は沢山だったかな?と思うほどだ。けれども、葉っぱばかりで花があまりついていなさそうだ。

 昨年の初夏以降、体調を崩した母は草取りが出来ない状態だったので、私が少しはやってはいたものの、一昨年と較べたら庭にかける手は格段に少なくなった。

 福寿草を探していたときに、その支柱が目に入った。もしやと思い、その支柱の辺りをみてみると、福寿草の花芽がでている。支柱は福寿草の目印だったんだね、お母さん。

 だけどどうやら去年と場所が違う気がする。母が株分けして植えておいたものらしい。別の場所の支柱をみると、そこにも花芽が出ていた。その場所は確実に昨年にはなかった場所だ。

 翌週、もしかしたら咲いているかと思ったが、また寒くなったせいかまだ蕾はかたそうだ。先週気がつかなかったもう一組の支柱が目に入る。なぜ先週気が付かなかったのか不思議だけど、思ってもいない場所だったからだろう。お母さん、ここもちゃんと芽が出ているよ。

 母が昨年株分けした福寿草を今年母は見ることができない。昨年の春に土をいじっているときは、今年の福寿草を想像していたことだろう。水仙も昨年株分けしていたに違いない。

 春を告げる福寿草、昼過ぎくらいまでしか咲いていないその花を本当にかわいいねと母は毎年うれしそうに話し、週末にしか来ない私に見せたがっていた。きっと、近所の人にも「咲いたがよ」と言って見せていたのだろう。

 福寿草たち、今年は毎日見てくれる人がいなくなったよ。きれいに咲いてくれるのに毎朝挨拶してあげられなくなっちゃた。

 その一週間後の3月2日は前日の夜から降っていた雪が積もり、伸びてきた花芽は雪に埋まっていた。雪の下でもう少し我慢して、ある日蕾は静かに開き、花を咲かせ、春を告げる。